細菌やウイルスではなく原虫で感染!膣トリコモナス症

膣トリコモナス症はべん毛虫類に属するトリコモナス原虫によって引き起こされる炎症性疾患のことであり、膣や外陰部など性器を中心に発症する性病です。
原虫症の主な流行地帯は熱帯・亜熱帯地域であり、毎年多くの死者を出しています。
その流行の背景には、原虫の媒介する昆虫の生息地であるという地理的な条件や、水道などのインフラ整備、衛生対策の遅れなどの要因があるといわれています。

わが国においては、海外渡航者の増加に伴い、輸入感染症として持ち込まれるほか、性病や日和見感染症の症例が増加しています。
女性で、性交後5日から1ヶ月間経過してから発症することが多いです。
膣トリコモナスの症状としては、外陰部の掻痒感、悪臭のある黄色や淡い灰色、泡沫状のおりものの増量、膣の発赤がみられます。
特に月経の後に増悪するおりもの、性器の痛み、性交時痛などはこの病気に特徴的と言えるでしょう。
確定診断は、膣分泌物の鏡検でトリコモナス原虫を検出することによって行われます。

トリコモナスによる症状は通常、女性に対して現れやすく、男性はほぼ無症状で経過することが多いです。
しかしそれでも男性に症状がある場合には、違和感や尿道炎を訴えることがあります。

もともと膣内にはデーデルライン桿菌という常在菌がいます。
これは膣の粘膜がはがれた時に流出するグリコーゲンを乳酸に変える働きがあります。
これにより、膣内は酸性環境に保たれ、病原微生物の増殖を防いでいます。

しかし、このトリコモナス原虫はデーデルライン桿菌の栄養となるグリコーゲンを奪ってしまうため、膣内ではデーデルライン桿菌が枯渇して、膣炎を発症するのです。
治療にはメトロニダゾールまたはチニダゾールの経口投与が一般的です。
経口投与が必要なのは、原虫が膣内だけでなく、尿道や直腸などに生息している場合もあるからです。
しかし、メトロニダゾールは胎盤を通過して胎児に移行するため、妊婦の場合には原則として膣錠を用います。

性交渉以外で膣トリコモナス症に感染する可能性も

性行為以外にも、衣類や便器、内診や検診台などからも感染することがあります。
ただし、トリコモナス原虫は42℃以上で死滅するため、特にわが国の場合には、入浴時の感染は稀だと言われています。
また母親が膣トリコモナスに罹患している場合、稀に子供に移ることもあるようです。
そのため、性交渉を行ったことのない女性や子供にも発症することはないとは言い切れません。

トリコモナス原虫は乾燥には弱いという特徴がありますが、水中では長時間生息し続けることが出来ます。
そのため公衆浴場などの環境では、稀に膣トリコモナスが伝染してしまうこともあります。
しかし、特に男児の場合は、尿道に感染した時には、排尿によって洗い流されることもあります。
このように、性交渉を持たない女性や子供に発症することはごく僅かなのです。
地域によって感染率は実に多彩です。
近年わが国の感染率は徐々に減少してきていますが、決して予断を許さない状況です。
なかには再発を繰り返してしまう難治症例も報告されています。

また膣トリコモナスは感染者の年齢層が幅広く、中高年以降の男女にもしばしば感染がみられます。
このように膣トリコモナスは重症度も好発する年齢も様々だという特徴があります。
しかし先述の通り無症状のケースも多く存在していますが、症状がないからと言って、治療をしなくてもいいわけではありません。

そのままトリコモナス症を放置していた場合、最悪なケースでは炎症が卵管まで進み不妊症や流産、早産などを将来きたすことがあります。
そのため、早期発見、早期治療が重要となります。
性病であるため、プライバシーを考えて、自宅で行うことが出来る簡易検査キットも販売されています。
本症を疑った場合には一度試しに検査をするべきと言えるでしょう。